ワイナリーの畑はヴェネト州パドヴァ県にある人口約2,000人の小さな町、チント・エウガネオ。州都パドヴァの南西に位置し、自然保護区であるエウガネエ丘陵地域公園に含まれる県内唯一の高台です。また、火山地帯に広がった丘陵は温泉も有名な土地です。この地域の生産者「アッラ・コスティエッラ」の当主フィリッポ・ガンバの妻「エリーザ」はこの土地を愛し敬意を示すために2021年に新たなワイナリーとして「カルパネーゼ・エリーザ」を立ち上げました。
エリーザはアッラ・コスティエッラでフィリッポと共に長くワイン造りに携わってきました。エリーザの祖父母は農家。乳牛を飼い、穀物を栽培、家庭で消費するワインを醸造していたこともあり、彼女は常にエウガネオの大地と共に育ってきた背景があります。社会人になると金属会社での事務職に就きましたが、夫であるフィリッポを支えるべくワイナリーで働き始めます。既にワイナリーでの仕事に携わっていた彼女が新たなプロジェクトに取り組むことを決めたのは2つの理由があります。まずは、デスクワークというオフィスから外に出て常に自然と向き合うことのできる環境に身を置いていたいこと。そして、愛するエウガネエ丘陵に敬意を表する方法として、この地域を感じられるワインを自ら造りたいと考えたことです。
彼女がワインを造るにあたり重要と考えるのは、何よりもまず「良い葡萄」を生産すること。ボトルの中に込めようとしているのは、ワインをはるかに超えた、この土地に対する敬意なのです。葡萄畑は無農薬栽培。火山性土壌で南西向きの標高170mの立地。50年以上の高い樹齢の葡萄の樹です。栽培品種はリースリング、タイ・ビアンコ、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨンです。醸造で使用するのはコスティエッラと同じくセメントタンク。ワインの味わいは「太陽に照らされた畑の緑を感じれるようなワイン」を目指しています。
彼女が今回リリースする白と赤のワインは共に「ボーラ」と名付けられました。ボーラとは北または北東から吹き降ろす寒冷風のことですが、エウガネイ丘陵の「ロヴァロッラ山」の砦に住んでいた「エリザの祖父」へのオマージュとして命名されました。なぜならば、祖父が住んでいた場所では常にボーラが吹いており、冬はこの風のおかげで家の周りに霧が出ず、丘の先端は一面霧の白い海から現れた島の様に見えたと言います。その光景から祖父の一家は「ボーラ一家」というニックネームを授かっていたそうです。
産まれたてのワイナリーということもあり、葡萄畑の管理はエリーザによって行われていますが、醸造はフィリッポの協力を仰いでいます。そばで見てきた妻だからこそ、夫のワイン造りには絶対的な信頼を持っています。夫婦として、またワイン造りのパートナーとしてこれからも二人三脚でこの土地を表現するワインを造り続けてくれることでしょう。