アブルッツォ州の真ん中に位置する海に面した港町ペスカーラ。ここから内陸に20kmほど進むと、ピアネッラ村があります。バジリカータ出身のイオーレは、家族でキエティに海の家を持っていました。その縁でここの土地を取得し、夢であったワイン造りを始めました。当初は、エノロゴを雇い、技術に頼ったワイン造りを行っていましたが、どのワインにも個性が感じられず、彼女が造りたいワインではありませんでした。そんな時、コッレ・カプレッタと出会い、彼らのワインに衝撃を受け、考え方を大きく変えていきます。それまで用いてきた醸造用の機械や装置を全て手放し、1つのダミジャーナ(45Lの斗瓶)から新しいスタートを切る決意をし、ここにラバスコの新しい歴史が始まりました。彼女の畑は、アドリア海からアペニン山脈に向かう途中、海抜300~350mの土地にあります。点在する畑は全部で9ha。化学肥料や農薬は一切使用せず、必要最低限の銅と硫黄で防疫します。また、必要に応じてマメ科の植物による窒素補給、ビオデナミのプレパラシオン500番なども散布します。しかしいずれは極力何もしない農業に変えていきたいと彼女は考えています。醸造は極めてシンプルで、基本プラスティック桶にてマセレーション、圧搾後ステンレスタンク、またはバリックで自然発酵を行います。ダミジャーナはマセの発酵中に移し替え、発生し続ける二酸化炭素により酸化と雑菌を防ぎます。その後、種類によってステンレスタンク、ダミジャーナ、バリックそれぞれで熟成。収穫からボトル詰めまでの間、全ての工程でSO2は一切使用しません。フィルターもかけず、ブドウのピュアな味わいをそのままボトル詰めします。0からワイン造りを見つめ直し、全てを変えた彼女の挑戦は、10年の歳月が経ち、畑もよい状態になって、味わいにも磨きがかかってきました。特に2019年あたりからはブドウの力が強くなってきているのを感じます。2021年9月に蔵を訪ねたところ、畑のブドウは非常に健康そうで、醸造にもシンプルだが細かな配慮が配られており、何より彼女の嬉々として醸造している姿を垣間見ることが出来ました。畑からも醸造からも彼女の強い想いを感じることができ、その想いがこの素晴らしいワインを造りだしているのだと再認識いたしました。 4ヶ所の畑があり、蔵の周りが2002年に彼女が植えたサン・デジデリオ畑(2.4ha)。やや低い垣根仕立てで、南向きの斜面にあり、海からの潮風を多く受ける畑です。味わいは凝縮感があり、力強く、ここの畑から、ロザート・クンタディン、ロッソ・クンタディン、ロザート・ダミジャーナ、が造られます。カンチェッリ畑(4ha)はなだらかな丘にあり、樹齢30年ほど。ペルゴラ式で20年前に購入した畑です。ビアンコ・カンチェッリ、カンチェリーノ、ロザート・カンチェッリ、ロッソ・カンチェッリ、ロッソ・デラ・コントラーダが造られます。そのすぐ下の窪地にコンケッタ畑(0.4ha)があり、この畑からビアンコ・ヴィヴァーチェを造っています。最後にサリータ畑(2.2ha)、平均樹齢40年のペルゴラ式で、急な北向き斜面にあり、しかし良いブドウが取れる畑です。ここから、ビアンコ・サリータ、そしてわずか10列からビアンコ・ダミジャーナが出来ます。ダミジャーナ用のブドウは粒が小さく、粒同士の隙間が空いていて、食べさせてもらうと、サリータ用のブドウより味に深みがあります。ブドウの段階から違いがあるのですね。その他、年により造らない年もありますが、サリータ畑上部のモンテプルチアーノからロザート・ヴィヴァーチェ、下部からロッソ・ダミジャーナ、フレニエットが造られます。(インポーター資料より)