カラーブリア州北部サン・マルコ・アルジェンターノで張り切る若い蔵元で、造り手はファビオという実直なひょうきん者で、誰からも好かれそうな性格だと思います。仲間2人と共に協同事業として立ち上げましたが、小麦などの農作物を作る友達、彼らの産物販売を担う友達で構成する愉快な 3人なのです。
葡萄栽培や醸造は概ねファビオが中心となってせっせと汗をかいております。 2015 年から醸造をスタートしてから土壌改良や葡萄の素性を追求している状況です。
葡萄栽培の他には、ひよこ豆や小麦、イチジクなどを栽培し、その小麦を加工したコセンツァ地方の名物のタラッリ、カンナルーティ やピシャリアトゥ を作ったり、イチジクをオーブンで焼煮したルンモッティ(Rhummotti)を販売するなどもし、 これらはビックリするほどシンプルなのに凄く美味しいんです。
訪問した時期は祝祭日で、小さな街を歩けば全員がファビオの知り合いのようで、 僅か 200m ほどの市場を歩くだけで一苦労。 挨拶やハグを交わしながらの小話。 一方で、待たされる我々…。 その短い距離を歩くだけでも 1 時間を要するほどに地元民との密接な人間関係が炸裂していました(イタリアの小さな集落ではよくある光景ですが…)。
チャーヴォラ・ネーラに限らず、ここ数年に若い造り手が生まれているカラーブリア。封建的かつ、昔ながらの農業スタイルが多い土地柄で、量産傾向が強い中、根本的な質を求める造り手が現れ始めています。
小さなこの集落で生まれ育ったファビオは、ジェノヴァで大学卒業。その後、この地の地葡萄を活かして、最大限に土壌や葡萄そのものをワインの中で表現できる道を模索し始めました。
この辺りは地品種葡萄も多いわりに、あまり大切にされていないことに憂いを感じ、 それらのポテンシャルを再興&評価したい使命感のような気持ちに駆られ、それを手探りで実行することにしたのです。
畑では殺虫剤や農薬を使用せず、環境に優しいアプローチを行ない、必要に応じて硫黄か銅を使用するのみ。カンティーナでは野生酵母にみで醗酵を行い、酸化防止剤の添加もできる限り少なくしながら、じっくり時間をかけて醸造するように心がけています。
狭小蔵であるがゆえに物理的な制約があるので、熟成させる時間にも限界があるものの、タンニン含有量が多い赤ワインに関しは時間をかけてじっくりと熟成させます。全体の年間生産本数もまだ5,000本ほどと少なく、ロザートに至っては500本/年程度。
所有する畑はカンティーナ側にあるやや砂質を含む粘土質土壌。ここでは赤品種が栽培され、ビアンコは北東部のやや離れた場所で標高が高く、脆い地質のシルト岩と砂質の土壌で、同じ蔵のワインでも質感が全くと言っていいほど異なる雰囲気なので、そこも面白いです。
ライフスタイル同様に醸造もシンプルで非常にスマートに行ないますが、仕事はとてつもなくハードなのです。彼の経験値が上がるにつれ、ワインに対してもっと違った見方や考え方が出てくることも容易に想像でき、今後も切磋琢磨しながらレベルアップして反映されるはずです。 基本的な姿勢は普遍的で、ワインそのものが直感的に土壌や葡萄の力を感じるものであり 、作為的なことから誕生するものではないという信念を持ち続けています。
カラーブリア州、サン・マルコ・アルジェンターノで奮闘するチャーヴォラ・ネーラは地元をこよなく愛する注目すべき蔵元です。
今後2018年以降はどのワインも混醸ではなく、100%で仕込まれる予定で、それも楽しみの一つです。
*Ciavola Nera / チャーヴォラ・ネーラ : この辺りに生息する象徴的なカラスの意(インポーター資料より)